実際に塗装工事がどのように行われているのかはあまりご存じないかと思います。
今回はRC(鉄筋コンクリート)造吹き付けタイル塗装された外壁の塗り替え、及びスレート屋根の塗り替え工程を例として、実際の作業風景の写真を交えて解説していきます。
外壁の下地処理工程”
下地処理とは塗料を塗る前において、塗装箇所の汚れを取り除いたり、補修を行うことをいいます。
適切に下地処理を行うことによって、塗装箇所への塗料の密着性が良くなり、完成後の仕上がりも大きく向上します。
もし下地の処理がしっかり行われていなければ、いくら耐久性の高い高級な塗料を使用したとしても、その能力を発揮できず、すぐに塗装が剥がれてしまうなどの欠陥が発生します。
下地処理は塗装工事が終わってしまうと目に見えない部分です。
ですが、松原塗装はこの下地処理こそ塗装工事全体において、最も重要な工事工程と考え、最も慎重かつ丁寧に作業に取り組んでいます。
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1. 高圧洗浄で汚れを落とす
高圧洗浄工程
100~150㎏/c㎡という高い圧力で水を噴射する高圧洗浄機を使用して、塗装面の洗浄を行います。
塗装面の汚れを落とす他にも、藻やカビ、付着力の弱くなった古い塗装面をある程度剥離する効果もあります。
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2. 養生
養生作業の様子
時には周辺の車両にも養生をします。
高圧洗浄後、「養生」を施します。養生とは塗装箇所以外への塗料の付着を防ぐために、建物の周りをシートで覆うことや、塗装しない部分をビニールなどでマスキング処理を行うことを言います。
建物の周りを覆うことによって、塗装時の塗料の飛散を防ぎ、近隣にご迷惑のかからないようにします。
また、塗装面が外からのゴミなどによって汚れることから保護する効果もあり、よりいっそうきれいに仕上げることができます。
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3. クラック(ひび割れ)の処置
クラック周辺の高圧洗浄後
外壁のクラック(ひび割れ)の補修を行っていきます。
しっかりと診断を行い、クラックの状態や外壁の種類に応じて最も適した補修を行います。
クラックの状態によっては水分の浸食を防ぐために、先にクラックの補修を行ってから高圧洗浄を行うこともあります。
今回はクラックの大きさから、クラックに沿って溝を作り、内部へシーリング材を充填することによって雨水の浸入を防ぐのに効果のあるVカットシール充填工法と呼ばれる工程での補修作業です。
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3-1. 塗膜ケレン(剥離)
塗膜ケレン(剥離)作業の様子
経年劣化や今回のようなクラックの発生箇所においては、古い塗膜が劣化を起こし外壁から剥がれを起こしていることがあります。
塗膜ケレンとは、劣化や剥がれの発生した古い塗膜を剥離する作業のことをいいます。
実際はクラック補修の有無にかかわらず、古い塗膜の劣化がある場合は行わなくてはならない工程となります。
最初に行う高圧洗浄時にも、ある程度古い塗膜は除去されますが、剥離できなかった箇所においては手作業にて剥離を行います。
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3-2. Vカット(サンダーケレン)
Vカット作業の様子
最初にクラックに沿ってサンダーと呼ばれる電動工具を使い、V字、またはU字型に溝を入れてクラックを埋める準備を行っていきます。
あえてクラックの幅を広げることにによって、後の工程でシーリング材をしっかりと充填することが可能となります。
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3-3. コーキングプライマーの塗布
コーキングプライマー塗布作業の様子
VカットまたはUカット処理後、コーキングプライマーと呼ばれる下塗り材の塗布を行います。
これは次の工程で使用するコーキング材を、施工箇所へしっかり密着させるために欠かせない作業です。
この工程を省略するとコーキング材が剥がれやすくなり、耐久性が著しく低下する要因となりますので非常に重要な工程です。
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3-4. コーキング処理
コーキング処理作業の様子
コーキング処理後
先ほど入れたV字、またはU字型の溝へ乾いても弾力性と防水性を持つシーリング材を充填する作業をコーキング処理といいます。
特にクラック発生の原因が建物自体や地盤が原因によるものであると思われる場合には、施工完了後に同じ箇所で再度クラックが発生する場合があります。
コーキング処理を行っておくと、もし再度クラックが発生した場合でもシーリング材の防水効果が雨水の浸食を防ぐため、雨漏りや内部の腐食を防ぐのに効果があります。
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3-5. クラック補修部の模様の復元
クラック補修部の模様の復元
コーキング処理が終わった後、外壁の周囲との見た目の差異を無くすために模様の復元を行っていきます。
コーキング材の上から、樹脂パテなどの材料をコテやヘラなどを使用して塗りつけ、周りとの段差を無くしていきます。これを不陸調整または不陸ならしといいます。
その後外壁に合わせて模様を復元していきますが、外壁が吹き付けタイルの場合には模様の復元方法には2通りの方法があります。
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・マスチックローラー(砂骨ローラー)による柄付け
仕上がりが凸凹状になる骨材入り塗料と、凹凸模様を表現するのに適したマスチックローラーを使用して下塗り工程で模様を復元する方法です。
下記の吹き付け処理には及びませんがパターンの補修が可能で、かつ下塗り工程と同時に行うため工程の削減が可能となります。
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・吹き付けによる柄付け
専用の工具を使用し塗料を吹き付けて模様を復元します。
既存の模様に合わせて処理を行うため、違和感のない非常にきれいな仕上がりとなります。
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これでクラックの補修作業は終了となります。
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外壁の塗装処理工程
下地処理工程が終了後、いよいよ実際に目に映る色や艶といった美観に関係する塗装処理になります。
実際には下塗り、中塗り、上塗りの3工程へて完成となります。
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4. 下塗り工程
実際の色や艶を出すための上塗りの前に、下塗り材の塗布を行っていきます。
下塗り材とは、塗装箇所と下地材と上塗り材を密着させる接着剤のような役割を持つ塗料の事をいいます。
上塗り工程で使用される塗料は耐候性や防カビ効果、防苔効果、色合いも美しいのですが、下地との密着力が弱いという欠点を持っています。
その密着力を補うために上塗り工程の前に下塗り材の塗布を行います。-
4-1. シーラーの塗布
浸透シーラー塗布作業の様子
今回のように下地の劣化が激しい場合、まずは密着力を高めるために浸透力のあるシーラーを塗布します。
シーラーには水性と溶剤型という種類があり、今回は浸透力の高い溶剤型のエポキシ樹脂性のものを使用しています。
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4-2. 弾性フィラーの塗布
弾性フィラーの塗布の様子
弾性という名前が示すとおり、乾燥後にも弾力性があるため、クラックの動きに追従することが出来る特徴があります。
仮に完成後に少しクラックが動いた場合でも、再度クラックの発生を抑えることができます。
現在、塗り替え時の下塗り材としては微弾性フィラーが主流を占めています。今回は下地の劣化が大きいことから、シーラー(溶剤系)+弾性フィラーの組み合わせで下塗りを行っています。
下塗り塗料についてはより詳しく別ページ(下塗り用塗料について)にて解説しております。併せてご覧頂きますとよりいっそう、塗り替えについてご理解頂けるかと思いますので、ぜひご一読下さい。
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5. 中塗り&上塗り
中塗り作業の様子
中塗り直後の外壁
上塗り作業の様子
下塗り工程が終了したら、いよいよ色や艶など実際の見た目を決める表面の塗装を行っていきます。
上塗り工程で使用される塗料は様々な種類があり、塗装面の素材、下塗り工程で使用した下塗り材に合わせて適したものを選択する必要があります。
下塗り材と上塗り材の組み合わせが適正で無い場合、硬化した下塗り材が溶け出したり、強固な密着力が得られず塗膜が剥がれてしまったり、たとえ高級な塗料を使用しても期待される耐久性を発揮できないなど、様々な弊害が発生する場合もあります。
また塗料についてのより詳しい解説を、塗装の基礎知識にてご用意しております。併せてご覧頂きますとよりいっそう、塗り替えについてご理解頂けるかと思いますので、ぜひご一読下さい。
中塗り工程と上塗り工程は同じ色の塗料で
業者の方針やお客様の要望(手抜き工事防止目的)で中塗り工程と上塗り工程において色を変えて塗装を行う事もあるようですが、弊社におきましては中塗りと上塗り工程においては、同じ色の塗料で重ね塗りを行う事が重要だと考えています。
これは、経年劣化によって上塗り部が劣化するにつれ、中塗り部の色が表面に出てきてしまうためです。
中塗りと上塗り工程で同じ色の塗料を使用し、塗膜に厚みを持たせることによってこの症状は防ぐことが可能になります。